科学的根拠に基づく認知症予防

母が認知症。今から私にもできる、科学的に根拠のある予防法を試しています。

うつ病が認知症を引き起こすメカニズム

今日は、2016年のこちらの論文をご紹介します。


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アルツハイマー病の危険因子としてのうつ病


http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0091302215300108


うつ病アルツハイマー病の前駆症状であり、アルツハイマー病の症状の一つでもあることから、その関連性は多く指摘されてきた。うつ病と一口に言っても、いくつかのサブタイプがあり、サブタイプごとの危険因子の違いもあるかも知れない。

うつ病アルツハイマー病の共通のメカニズムを考えた時、これまでの研究結果からは遺伝的要因は可能性が低く、後天的要因から検討する。

うつ病アルツハイマー病の両方で変化が起こるのが、コルチコイドおよびサイトカインの増加である。これらの物質は、海馬の神経新生を阻害するほか、脳内の炎症促進作用があることがわかっている。

このことから、うつ病がコルチコイドやサイトカインを介してアルツハイマー病を引き起こすことが考えられるが、メカニズムに関してはまだ論争中である。

今後は、うつ病のサブタイプ別に研究することにより、早期の介入が必要な人たちを特定し、アルツハイマー病リスクの低下に役立てたい。


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認知症うつ病の関連は以前から指摘されていますが、そのメカニズムについても研究が進んでいるようですね。炎症が認知症発症に関与しているという話は、他でも出ていました。


うつ病はなりたくてなるわけではないので、予防しましょうと言っても役に立たないのですが、もしなってしまったら、躊躇せずに専門医などに頼って治療した方が、その時点での生活の質ということのみならず、将来の認知症の予防という観点でもよさそうです。

中年期の血管リスクはアルツハイマーの原因となりうる

今日は2017年に出されたこちらの論文をご紹介します。


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中年期の血管危険因子と脳アミロイド沈着との関連


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/28399252/?i=1&from=alzheimer%20risk%20jama


認知症のない322名の被験者(平均年齢、52歳、女性58%、黒人43%)の心血管リスク(肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症など)を評価し、その20年以上後に、PETによりアミロイドベータの沈着度合いが測定された。


その結果、1つの血管リスク因子があるとアミロイドベータの沈着度合いは1.88倍、2つ以上の血管リスク因子については2.88倍と有意に上昇していた。人種とリスク因子の相互作用は見られなかった。晩年期の血管リスク因子は、脳アミロイド沈着と関連していなかった


以上から、中年期のの心血管リスク因子の増加は、アミロイドベータ沈着上昇に有意に関連していた。この関連は、晩年のリスク要因にとって有意ではなかった。これらの知見は、アルツハイマー病の発症に血管疾患が関与するというこれまでの研究結果と合致する。


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血管系のリスク要因が認知症に関係するという研究は今までにもありましたが、アルツハイマー病の原因とされているアミロイドベータ沈着との関連を調べている点が新しいと思います。

血管系のリスクは脳血管型認知症の要因になることは容易に想像できますが、アルツハイマー型の発症にも関連しているらしいということですね。


私は、ここで上げられているリスク要因の中では高脂血症が当てはまるので、薬で治療しています。これからもその治療は継続し、肥満や高血圧、糖尿病も予防していこうと思います。

難聴が認知症に及ぼす影響

今日は難聴と認知症の関連を調べた、2017年のこちらの記事をご紹介します。

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多民族コホートにおける難聴と認知症発症の関係


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/28323321/


目的:難聴が認知症と関連しているかどうかを多民族コミュニティの中で検討する


デザイン:前向き疫学コホート研究


被験者:ニューヨークの民族的に多様なコミュニティ(n = 1,881)の成員


尺度:難聴の尺度は実験者の観察および補聴器の使用の自己申告により定義。認知症の尺度は、専門家が標準的な研究基準を用いて診断。 Cox比例ハザードモデルを使用して、ベースライン時の難聴と認知症のリスクとの関係を調べた。


結果:人口統計学的特徴、心血管リスク因子、アポリポタンパク質E4遺伝子型および脳卒中を調整後で、難聴は認知症のリスクが1.69倍高かった。人種別に検討すると、難聴と認知症の関連はすべての群で高かったが、黒人のみで統計的に有意であった。


結論:難聴は、多民族コホートにおいて、認知症の発症リスクと関連していた。 難聴が認知症に寄与するかどうか、および難聴を治療することが認知症のリスクを低下させることができるかどうかを判断するためには、さらなる研究が必要である。

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難聴になると刺激が少なくなるため認知症になりやすいという話は聞いたことがあります。

私はまださすがに難聴にはなっていないと思いますが、テレビの音量は大きくなったかも知れないです。

これから耳が遠くなってきたら、早めに補聴器のお世話になろうと思います。補聴器の性能は相当上がってきているようですし、これからもっと上がっていくでしょう。

糖尿病と認知症の関係

今日は2017年のこちらの論文をご紹介します。


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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28210868

認知障害認知症2型糖尿病の新たな合併症 - 糖尿病専門医の視点から

2型糖尿病およびアルツハイマー病は、ともに加齢により多くの人が発症する疾患である。発生頻度を調べると、 2型糖尿病患者はアルツハイマー病のリスクが高い可能性がある。効果的なアルツハイマー病の予防および治療戦略の開発にはこの二つの病気のメカニズムを理解することが不可欠である。 アルツハイマー病の原因になるのかはまだ結論が出ていないが、糖尿病は認知機能の低下と関連している。インシュリン抵抗性、炎症、糖化最終生成物の蓄積および酸化的ストレスはすべて、アルツハイマー病と糖尿病の合併症の共通した原因である。したがって、これらの要因が2型糖尿病患者の認知症のリスク増加に関与している考えることは理にかなっている。認知障害の早期診断と、アルツハイマー病発症のリスクが高い患者の特定は、医療者にとっては大きな課題である。それができるようになれば、糖尿病治療にオーダーメイド医療を導入することができる。これを実現するために何が必要なのか明らかにしていくことが急務だ。
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糖尿病患者に認知症が多いのではという話はときどき聞くのですが、因果関係についてはまだよくわからないみたいです。ただこの論文が言っているように、その二つの疾患には共通のメカニズムがあるようです。糖尿病予防や糖尿病になっている人はきちんと血糖コントロールすることが、認知症の予防になるかも知れません。

 

私は今のところ糖尿病はありませんが、たまに、尿試験紙で血糖を調べています。
食事の1時間後が感度がいいそうですよ。
http://www.terumo.co.jp/consumer/guide/symptom/diabetes/screening.html

 

あと、糖質をとりすぎないように気をつけてはいます。炭水化物が好物なので、なかなかきびしいんですが。

市販の鎮痛薬に認知症予防効果があるかも

今日は、2017年に掲載されたこちらの論文をご紹介します。

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Targeting neuroinflammation in Alzheimer's disease: evidence for NSAIDs and novel therapeutics.

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27293026

 

アルツハイマー病の発症に免疫系が関与しているのではないかという認識が高まっている。免疫系を調整する非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は、アルツハイマー病のリスクを軽減する薬剤として、前臨床研究や疫学研究で取り組まれてきた。
本研究では、作用機序、疫学研究の結果、無作為化比較試験のデータにより、アルツハイマー病に対するNSAIDsの効果の科学的根拠(エビデンス)を検討する。さらに、現在、開発中の前臨床段階および臨床段階にある炎症を標的とするための新しい方法を調査する。NSAIDsは、主としてミクログリアの機能を調節し、アミロイド-β食作用を増強し、潜在的に有害な前炎症反応を抑制し、全身免疫を増強するように作用する。
NSAIDsの長期使用は、疫学研究ではアルツハイマー病の発生率低下と関連するとしているが、無作為化比較試験ではこれらの知見を支持していない。したがって、NSAIDの使用は今のところ、アルツハイマー病の一次予防や治療に推奨することはできない。しかし、他の病気でNSAIDsを長期服用している認知症でない患者では、アルツハイマー病のリスクが低下するというエビデンスがあることを示す研究もある。

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NSAIDsというのは、バファリンとか、イブとかの鎮痛薬のことです。ステロイド以外の鎮痛薬のことをひっくるめてこう呼んでいます。この論文では、こういった薬に認知症予防効果があるかもしれないと言っています。

このNSAIDsの一つにアスピリンという薬があります。アスピリンのうち低容量のアスピリンは鎮痛薬とは違った使われ方をしています。心臓発作などの再発防止目的で投与されているのです。血液を凝固される血小板の作用を抑えて、ドロドロ血を防ぐ効果があるようです。日本では心筋梗塞などに既往があるなど方には処方されていますし、アメリカでは市販されています。

 

実は私、このアルピリンの低容量タイプのものを二年くらい前から毎日飲んでします。

 

私は認知症予防のために飲み始めたのではなく、もともと飲んでいた夫が体質的に合わないということで(夫は出血しやすいらしく、皮膚の内出血を起こしていましたから)、残ったのを私が飲んでみたのです。すると、私にはかなりいいのです。なんというか、それまで頭の後ろが重たいような嫌な感覚があったのがなくなりました。その頭重感の延長線上として起こっていた頭痛も大幅に減りました。おまけにそれまで重かった生理痛までなくなくなったのです。

 

薬を毎日飲むことには抵抗がある人が多いと思うのですが、アスピリンはもともと植物由来で、古くからある安全性も確立されている薬なので、心配しすぎなくてもいいように思います。ただし日本では低容量アスピリンは現時点では市販されていません。私はアメリカから通販で買っています。市販薬をピルカッターなどで切ってもいいかもしれませんね。

脳血流を改善する薬剤や医療機器により認知症を予防

今日ご紹介するのは、2016年にBrain Pathologyに紹介されたこちらのレビュー論文です。

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27324946

心臓および脳血管疾患は、認知障害およびアルツハイマー病の発症における主要な危険因子である。

これらの心臓 - 脳障害は、年齢とともに脳血流の低下を引き起こし、神経細胞に十分なエネルギーを供給できなくなる。

高齢者の脳血流低下は、軽度認知障害の発症と強く関連しており、アルツハイマー認知症につながると考えられている。

軽度認知障害を予防または治療し、その結果アルツハイマー病の発生率を低下させる治療の標的は、新規薬剤を用いて脳血流を高めることだ。

その薬剤とは、Rhoキナーゼ阻害剤、神経代謝エネルギー促進剤、サーチュインおよび血管成長因子などである。

さらに、光生物学的周波数変調と呼ばれるレーザー医学による新しい技術も開発されている。

光生物学的周波数変調は、神経細胞において非侵襲的にミトコンドリアエネルギー産生を刺激する低レベルレーザーを用いている。

新規な薬剤や光生物学的周波数変調の使用は、認知症につながる認知低下の治療または予防において重要なツールとなり得る。

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認知症予防には脳血流を改善が重要。そのための薬剤や機器も開発されてきていますという内容です。
私は血圧低めだし、心拍数も少ないし、冷え性だし、よくぼーっとしているので、脳にあまり血が行ってない気がしますが、薬や機器で改善できるようになるかも、ということなら、一つの希望になります。
現時点では、脳血流をよくするために自分としてできることは、運動くらいかな。

スタチンの認知症予防効果

今日の論文は、2015年にMedicine(Baltimore)に掲載されたスタチンに関するものです。

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26632742
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(商品名:アリセプト)を投与する軽度から中等度のアルツハイマー病患者について、アリセプトを投与する以前からスタチンを投与されていた患者といない患者で、認知症の進行度合いを比較した。その結果、スタチンを投与した患者の方が統計的に優位に認知症の進行が遅かった。
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今回は効果に肯定的な論文を取り上げましたが、スタチンの認知症予防効果については、これまであるというものとないというものとあり、いまだ確定的ではないようです。

 

ただ私は、少しでも効果のありそうなものは、可能な限り実践していこうというスタンスです。
そして私は、現在スタチン(クレストール)を飲んでいます。

もともと認知症予防目的ではなく、コレステロール(LDL)が高かったからなのですが(日本では認知症予防の適応はありませんので)。LDLは劇的に下がりましたよ。幸い副作用も特にありません。


コレステロールが高い方の中には、薬を飲みたがらない人も多いみたいですが、動脈硬化を遅らせるだけでなく、もしかしたら認知症予防効果もあるかも知れないということですので、早めに服薬を開始してもいいのではないでしょうか。