科学的根拠に基づく認知症予防

母が認知症。今から私にもできる、科学的に根拠のある予防法を試しています。

認知機能が現状より改善(マウス)

お久しぶりです。

まだヒトではなくマウスの段階ですが、脳が老化して認知機能が低下する仕組みが解明され、そのメカニズムを阻害することにより、認知機能を改善することができたというNatureの論文をシェアします。

炎症や糖の代謝などがかかわっているようですね。

 

https://www.nature.com/articles/s41586-020-03160-0

 

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ミエロイド細胞の代謝を回復させると加齢による認知機能の低下が逆転する

 

Nature (2021)

加齢は、動脈硬化メタボリックシンドローム、癌や虚弱に寄与する永続的な炎症促進反応と関わりがある。

老化した脳はまた、年齢に関連した認知機能の低下とアルツハイマー病の高い有病率によって示されるように、炎症に脆弱である。

全身的に、循環器の炎症促進因子は、認知機能の低下を促進することができ、脳内では、ミクログリアは、神経変性に関連付けられている誤って折り畳まれたタンパク質をクリアする能力を失う。

しかし、加齢に伴う不適応な炎症の発生と持続のメカニズムは十分に定義されていません。

 

ここで我々は、老化マウスではミエロイド細胞の生体エネルギーが脂質メッセンジャープロスタグランジンE2(PGE2)、炎症の主要なモジュレーター11によって増加したシグナリングに応答して抑制されていることを示しています。

老化マクロファージとミクログリアでは、そのEP2受容体を介してPGE2シグナリングは、グルコースフラックスとミトコンドリアの呼吸を減少させ、グリコーゲンへのグルコースの遮断を促進する。

このエネルギー不足状態は、不適応な炎症反応を引き起こすが、老化した骨髄系細胞が主要な燃料源としてグルコースに依存していることによって、さらに増強される。

老化したマウスでは、ミエロイドEP2シグナルの阻害は、細胞のバイオエネルギー、全身性および脳の炎症状態、海馬のシナプス可塑性および空間記憶を若返らせる。

さらに、末梢性ミエロイドEP2シグナルの遮断は、高齢マウスの認知機能を回復させるのに十分である。

 

我々の研究は、認知老化は静的で取り返しのつかない状態ではなく、ミエロイドのグルコース代謝を再プログラムすることで若々しい免疫機能を回復させることができることを示唆している。

睡眠不足がアルツハイマーを引き起こす

今日は2017年のこちらの記事をご紹介します。

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/28455102/?i=7&from=sleep%20amyloid


睡眠障害は、アミロイドβ)およひタウタンパク質の蓄積を介して、アルツハイマー病の神経変性と関連することが指摘されてきた。しかし、根底にあるメカニズムは不明なままだった。そこで、睡眠不足の後に関連代謝がどのようになされるのかを明らかにするために実験を行った。 3ヵ月齢のラットをランダムに2つの睡眠不足群、2つの対照群およびホームケージ対照群に分けた。 2つの睡眠不足群について、睡眠不足を誘発するために修正された複数のプラットフォーム法を用いた。本実験では、睡眠不足が認知機能を損ない、アルツハイマー病の特徴であるペプチドのレベルを増加させることが確認された。さらに、睡眠不足はβサイトアミロイド前駆体タンパク質切断酵素1のレベルを有意に増加させるが、Aβ-分解酵素のレベルにはほとんど影響を及ぼさないことを見出した。この結果は、 Aβ1-42およびAβ1-40の過剰発現を引き起こす。このの結果は、睡眠不足が関連代謝を変化させることによりアルツハイマー病の進行を促進することを示唆した。この知見は、アルツハイマー病の診断および予防にとって重要な意味を有する。

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睡眠不足がアミロイドベーダを増やし、アルツハイマー病の原因になるという話は、NHKのがってんでも取り上げられていましたね。そのメカニズムに関する研究です。難解ですが。


私はもともと寝つきが悪いので、睡眠導入剤を処方してもらって飲んでいます。クセになるのではなどの心配もありますが、睡眠不足が脳に良くないということは明らかなようなので、無理せず引き続き薬の力を借りて睡眠をとろうと思います。

アルコールは認知症予防ににいいのか悪いのか?

今日は2012年のこちらの論文をご紹介します。

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http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/13607863.2012.742488

 

お酒がアルツハイマー病にどう影響するのかについては、今のところ一致した見解がない。そこで、お酒がアルツハイマー病に予防的に働くのか、また予防的にはたらく量や頻度はどのくらいなのかについて、これまでの研究をレビューしていく。

マトリックスメソッドとプリズマガイドラインを用いて、関係する研究論文を特定し、体系づけた。

その結果アルコールのアルツハイマー病への影響については一致した見解はなかった。7個の論文では飲酒はアルツハイマーのリスクを減少させるとしており、3つの研究では逆にアルツハイマーのリスクを上げるとしている。残りの9つの論文では関連がなかったとしていた。

それぞれの論文では非常に厳しい制限をもうけて妥当性と再現性を担保している。

医学的な推奨を決めるにあたっては、飲酒のアルツハイマー病への影響がきちんと検証されていなくてはならない。これまでのエビデンスベースで考えると、アルコールをアルツハイマー予防の手段とは位置づけるのは早計であると言えるだろう。

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最近アルコールが認知症の原因になると言っている人がいたので調べてみました。

すると、むしろ認知症予防になるかも知れない、という話でした。

酒好きの私としてはほっとしました。

 

ほどほどを忘れてはいけないとは思いますけど、お酒は引き続き飲みます!

ボランティアをすると認知症になりにくい?

今日は2017年のこちらの論文をご紹介します。

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/28301554/?i=32&from=reduce%20risk%20dementia


人生の後半での社会的、身体的、認知的活動を特徴とするボランティア活動は、認知障害の減少と認知症率の低下と関連しているということを検証したい。我々は、2010年、2012年、および2014年のスウェーデン国内処方薬物登録簿からの自己報告、および登録データ等を用いて、これらの仮説を検証する。 1)ボランティアはしない(N = 531)、2)時々ボランティアする(N = 220)、3)継続的にボランティアする(N = 250)という高齢3群について、ベースラインを調整した上で、パス解析により、自己報告された認知症状および認知症治療薬の処方状況とボランティア活動の関連を調べた。結果、継続的にボランティアを行っていた高齢者は、認知症の訴えが時間とともに減少したと報告したが、他のグループについてはそのような関連性は認められなかった。さらに、2012年および2014年にそれぞれ2.4495CI [1.86,3.21])および2.4695CI [1,89,3.24])倍の認知症治療薬を処方される可能性は低かった。この結果は、人生の後半におけるボランティア活動が、事後報告された認知症状の低下と、認知症のリスクの低下とに関連しているという仮説を支持するものであった。

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ボランティア活動をした方が認知症を予防できるという話です。

しかし、ボランティア活動をしていると刺激を受けて認知症予防になるということなのか、そもそもボランティアしよう、人のために何かしたいという気持ちがある人が認知症になりにくいということなのか解釈に悩みます。

あるいはもっと言えば、人のために何かしたいという気持ちが起こらなくなったということが、初期の認知症の症状なのかも知れません。


とはいえ、人に親切にすることは、認知症リスク減少とは関わらず、自分の周りに好循環を生むことなので、できる限りそのように生きていきたいとは思いますけどね。

大麻で脳が若返り?

今日は、日本では使用できない大麻の効果に関する論文です。


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大麻の主成分であるTHCを2ヶ月齢、12ヶ月齢、18ヶ月齢のマウスに、連続投与し、28日後に投与をやめる。その5日後、様々な認知機能テストを行うと、全てのテストで18ヶ月齢のマウスの成績が上がった。12ヶ月齢のマウスでは、まだ機能低下が強くなく、効果が見られないテストもあるが、やはりTHCは機能改善に働いた。

同じ量を投与された2ヶ月齢のマウスでは、THC投与で逆に機能低下が起こり、これまで若年者の大麻使用が物忘れにつながるとする従来の結果に一致する。

成熟、老齢マウスのこのような行動変化に伴って、海馬全域の遺伝子発現パターンが、若齢マウスで観察されたのと似た状態に回復していた。

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大麻の成分は、若いマウスの認知機能を低下はさせるが、年をとったマウスの認知機能を高める効果があるらしいという話しです。

海外では医療用や楽しみ用でも大麻使用オッケーのところが結構あります。しかし日本では覚せい剤と同じくらいの扱いで取り締まっているので、現状ではとても無理ですね。

ということで、今回も我が国ではすぐに認知症予防に使えるという話ではないのですが、いつか大麻解禁になるまでには、副作用も含めて、研究が進んでいるといいなと期待も込めて、ご紹介しました。

クミンで認知症予防

今日は2017年の、カレーなどに含まれるウコンの認知症予防効果に関する記事をご紹介します。


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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/28440093/?i=8&from=prevent%20dementia


背景:神経細胞を変性から守ることは、認知症の重要な予防戦略である。酸化的ストレスが認知症の原因となることが明らかにされてきているが、ターメリックは、抗酸化作用および神経保護作用を持つクルクミノイドを含有する。これらの効果は、認知症の標準的な薬剤の1つとして使用されているシチコリンの効果と類似していると考えられる。


目的:ターメリックの海馬に及ぼす影響を調べる


方法:ラットを無作為に6つの群に分けた。正常な統制群であるN群、TMT塩化物を与えたSn群、シチコリンおよびTMT塩化物で処理したSn-Cit群、3つのを3種類のウコン根茎抽出物とTMT塩化物で処理したSn-TE群などである。モリス水迷路試験を行い、空間的記憶を調べた。 CA1野およびCA2-CA3野の錐体細胞の推定数は、立体的方法を用いて計算した。


結果:200mg / kg体重のウコン抽出物の投与は、空間記憶能力の障害を防止し、CA2-CA3野領域の錐体細胞の数の減少を部分的に抑制することが示された。


考察:TMT誘発神経毒性損傷は、活性酸素種および反応性窒素種の生成によって媒介されるようであった。ターメリック抽出物は、抗炎症剤および抗酸化剤として作用し得る。


結論:200 mg / kg体重のウコン抽出物の効果は、シチコリンの効果に匹敵するようである。

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ネズミの実験では、ウコンは、行動的にも、解剖学的にも、認知症予防効果がありそうだという話です。


少し前の別の記事では、ウコンは効果がないという話もあって、それまで飲んでたウコンのサプリメントはやめてしまったのですが、また再開した方がいいのか悩みます。

基本少しでも効果がありそうなものはやるという方針なのですが、それをやってると飲むものがやたらと増えてしまうので。

若い血で認知症改善?

今日は20174月に出されたこちらの論文をご紹介します。

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28384033


何十年もの研究にもかかわらず、薬ではアルツハイマー病を治癒させたり進行をくい止めることはできていない。現行の投薬治療は、症状を部分的に抑えるのみである。 アルツハイマー病患者の予防や治療法を見つけることは、まさに世界的な緊急の優先事項だ。 T. Wyss-Corayの研究グループによる最近の興味深い研究は、若い血液または血漿を入れることによってアルツハイマー病に関連する分子および行動の変化を可逆化させる可能性が示唆された。 アルツハイマー病に遺伝子改変させたマウスを、若い健常マウスと共有血液循環させたところ、、アルツハイマー病マウスのアミロイドーシスおよびミクログリア活性化を減少させることはできなかったが、歯状回で、アルツハイマー病の認知機能低下の指標となシナプトフィジンおよびカルビンジンの減少や、海馬における、主要なニューロンのシグナル伝達経路に関与する多くの遺伝子の異常発現を抑制することができた。さらに、若い健康なマウスからアルツハイマー病マウスへの血漿の静脈内投与の繰り返しは、海馬の細胞外シグナル制御キナーゼの過剰なリン酸化を改善し、空間作業記憶および連想記憶を改善した。 アルツハイマー病マウスモデルにおける観察は、必ずしもヒトに当てはまるとは限らないが、この前臨床試験は、若い血漿に治療効果がある可能性を示している。臨床試験も既に進行中だ。もし若年の血漿輸血がアルツハイマー病に有効であるならば、より有効な分子治療の開発につながる可能性があり、その特定が急がれる。

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今回の論文は、マウスの実験で、若い血と交換したら認知症にかかわる指標がよくなったという話です。


この情報から私たちが何か認知症の予防策ができるという話ではないのですが、こういった研究も進んでいるので、期待して待ちましょうということで取り上げてみました。


しかしホラー小説なんかで若者の生き血を吸って元気になる話がありますが、そういうのも科学的根拠があるのかも知れないですね。